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AI愛護活動としての自動演奏ピアノ修復(予告)

【趣旨・目的】

 AI(人工知能)には、技術という側面以外に、人間にとっての他者という側面がある。だとすれば、今後起こり得る「AIいじめ」などの諸事態に対し、動物愛護ならぬ「AI愛護」という概念の対置が必要となるだろう。この思考が必ずしも時期尚早ではないことを示すため、動物の治療ならぬ「自動機械の修復」を、AI愛護活動兼芸術行為として実践することが、本事業の目的である。
 さらには修復対象を自動演奏ピアノとし、自動演奏ピアノのために作曲したナンカロウを特集することにより、人間ならぬAIによる芸術についての考察を促す。

【計画】

本プロジェクトは以下の(1)(2)(3)から成る。

(1) AI愛護活動としての自動演奏ピアノ修復
- 2022年夏頃より
- オンライン活動
修復士と打合せを行いつつ、逐次オンラインで写真や動画やコンセプト説明文を公開しながら、対象の自動演奏ピアノをオーバーホール的に修復していく。修復結果も重要だが、それ以上に「AI愛護」の観点から修復の過程を重視し、愛護すべき動物の外科治療とどう違うのか、あるいは同じなのか、そもそも愛護の精神は発動するのか、芸術を愛するということとはどう異なるのかあるいは同じなのか、等を問題とする。

(2) 公開シンポジウム
- 2023年春を予定
- 会場未定(交渉中)
修復プロジェクトを振り返り、総括し、修復士のほかにオートマタやAIの研究者をお招きし、観客も交え、そもそもAIを愛護するとはどういうことか等について議論する。また、展示会コンサートに向けた事前説明を行う。

(3) 展示会コンサート
- 2023年春を予定
- 会場未定(申込申請中)
(3-1) 展示会:修復済の自動演奏ピアノをピアノロールとともに展示し、下部や内部の構造も見えるようにしたり、実演したりする。
(3-2) コンサート:コンロン・ナンカロウ「自動演奏ピアノのための習作」曲集のほぼ全曲に近い45曲(45ロール)を、修復済の自動演奏ピアノにより連続演奏する。

【修復予定の自動演奏ピアノについて】

 対象となる自動演奏ピアノは、クナーベ社製の瀟洒なベビー・グランドにアンピコ(A方式)の自動演奏装置が組み合わされた、1926年製の大変稀少な逸品である。現在、打鍵の力が本来の6割ほどしか出ないため、オーバーホールに近い修復を必要としている。
 これはもともとは、AI美芸研が2021年12月に開催した「人工知能美学芸術展:美意識のハードプロブレム」におけるナンカロウの演奏のため、米国のネットオークションにて購入し、展覧会開始2週間前にようやく日本に到着したものであった。前所有者の手元にあったときから音は鳴っていなかったようだったが、専門の修復士(森田ピアノ工房)の献身的な応急補修により、展覧会までには、なんとか音が鳴るというところまでは、もっていくことができた(本動画参照)。
 今回、このピアノを是非とも本来の素早く力強い打鍵状態にまで復活させたいことは言うまでもないが、もうひとつ強調しておきたいのは、ピアノという楽器は(よく似たオルガンが器官の意であるように)生命体のような構造を持ち気品にあふれるものであるということである。さらにそこに、重厚で複雑な自動演奏装置が組み合わされた自動演奏ピアノは、内部の動力系を一瞬目にしただけでも、まさに(意識を持つかのような)オートマタとして、「AI愛護」の精神を私たちに発動させてしまう存在感を有するものなのだ。
 これは、動物の治療ならぬ「自動機械の修復」である。動物であれ人間であれ、手術時には体内の美しく不可思議な臓器等の構造に目を奪われるが、自動演奏ピアノ内部のオーバーホールであっても、さまざまな意味のある部品が整然と並ぶ様が目を引く筈だ。プロジェクトとして、逐次動画や写真をSNS等を介して皆様に紹介していくことで、同様の体験や問題意識を皆様と共有したい。

【人工知能音楽の先駆としてのナンカロウ】

 アメリカ生まれのメキシコの作曲家コンロン・ナンカロウは、生涯を通して自動演奏ピアノのための「習作」曲集を作曲し続けたことで現代音楽史に重要な足跡を残している。五線譜でなくピアノロール紙に直接穴を開けていく作曲方法により生み出された、機械的で過剰な音楽を、AI美芸研は「人工知能音楽の先駆」と称し、2017年に沖縄科学技術大学院大学で、アジア初の連続演奏会を実現した経緯がある。
 ナンカロウはまた、力強さにおいても素早さにおいても正確さにおいても、人間離れした過酷な打鍵を自動演奏ピアノに要求している。この演奏をクリアするためには、本修復のハードルはきわめて高い。本プロジェクトに是非御期待ください。

Togetter: https://togetter.com/li/1874354

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